大田昌秀:県内移設ありきの普天間返還合意 

執筆者:野添文彬 2022年8月21日
タグ: 日本
エリア: アジア 北米
普天間基地返還の合意について共同会見する橋本龍太郎首相(左)とモンデール駐日米大使(C)時事
米兵による少女暴行事件に対する日本政府の対応に失望した大田昌秀は、知事が地主に変わって軍用地の強制使用を認める代理署名を拒否。県と政府との駆け引きは、村山富市政権から橋本龍太郎政権へと引き継がれ、そこに普天間返還問題を巡る混迷が加わる。

少女暴行事件の衝撃 

 1995年9月、沖縄県北部で少女が3人の米兵によって暴行される事件が起こった。しかも日米地位協定の下で、容疑者の米兵が当初、沖縄県警に引き渡されなかったため、沖縄県内ではさらに怒りが高まった。大田は日米地位協定の見直しを求め、沖縄県議会でも9月19日、地位協定の見直しを求める意見書が全会一致で可決される。 

 ところが、日本政府の対応は鈍かった。同日、河野洋平外相は大田と会談し、地位協定改定は議論が走り過ぎだと述べたのである。当時河野は、フィリピンから米軍が撤退したことを念頭に、日本からの米軍撤退への危機感を抱いていた。 

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
野添文彬(のぞえふみあき) 沖縄国際大学法学部 地域行政学科准教授。1984年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、同大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、日本外交史、沖縄基地問題。主な著書に『沖縄返還後の日米安保: 米軍基地をめぐる相克』(吉川弘文館/2016年)、『沖縄米軍基地全史』(吉川弘文館/2020年)がある。
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