Weekly北朝鮮『労働新聞』 (62)

新たに設立の軍需企業所、ロシア向け砲弾の量産も視野に(2024年4月21日~4月27日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年4月30日
タグ: 北朝鮮 ロシア
エリア: アジア
金正恩が「われわれの軍隊の砲兵力量強化で戦略的変化を起こすもの」と評価した240ミリ口径の多連装ロケット砲(『労働新聞HPより』)
軍需産業をつかさどる第2経済委員会の傘下に新設された国防工業企業所を金正恩国務委員長が参観した。240ミリ砲弾の「検収試験射撃」との表現から、量産を予告したと言え、ロシアへの輸出も想定した動きだと捉えられる。他方、今年2月に韓国と国交を樹立したキューバに対しては、労働新聞紙上での扱いに微妙な変化が見られた。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 4月24日付の第1面は、朝鮮労働党の第2回宣伝部門幹部講習会が20日から23日まで人民文化宮殿で開催されたことを報じた。参加者として李日煥(リ・イルファン)宣伝扇動担当書記、朱昌日(チュ・チャンイル)宣伝扇動部長ら幹部の名が挙げられたが、宣伝扇動部副部長であるはずの金与正(キム・ヨジョン)はこの種の会議に参加しないのが常である。

 講習会には、党中央委員会や地方党の宣伝扇動部幹部、省庁や工場、企業、農場の宣伝活動家、文学・芸術、出版報道部門の幹部らが出席し、「偉大な金正恩(キム・ジョンウン)同志の革命思想で全党と全社会を一色化することに党の思想活動の総力を集中すること」「革命事績事業、党の指導業績を通じた教育活動で新たな転換をもたらす問題、時代的要求に即して宣伝鼓舞の形式と方法を不断に革新していく問題、偉大な金正恩時代の革命精神、新しい千里馬(チョンリマ)精神で全国が沸き立つようにする問題」などが扱われた。「金正恩同志の革命思想」を徹底させることが目的となっており、記事中で「金日成(キム・イルソン)」や「金正日(キム・ジョンイル)」に触れられていないことが特徴的である。

 27日付第3面には「新時代の千里馬精神に従う紙上演壇を組織する」と題する記事が掲載され、「投稿は手紙と電話でもすることができ、国家資料通信網(イントラネット)を通じた電子郵便でも行うことができる」として、投稿先の住所と電話番号が添えられた。「自らの単位で成し遂げている成果と経験、党決定貫徹の助けとなる献身的な案」などを送る、読者によるお便りコーナーである。金正日政権末期の2010年2月に始まったこの試みは、毎年テーマを変えながら継続されてきた。代議員選挙のように、国民が政策形成に参画している形をとり、各個人に当事者意識を持たせる役割を担っているものと考えられる。

 26日付は、金正恩が朝鮮人民革命軍創建92周年(4月25日)に際して金日成軍事総合大学を訪問したことを3ページ半かけて報じた。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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