JA共済連の現役職員が組織の腐敗を告発(下)――「商品やサービスは他社より劣っている」

執筆者:窪田新之助 2023年12月25日
「自爆営業」をなくすには、顧客に選ばれるよい商品やサービスを揃えることが一番の近道だ(JA共済公式サイトより)
JA共済連は共済(保険)の営業で地域のJA(農業協同組合)に過大なノルマを課している。だが、自らが開発するその商品やサービスがそもそも他社より劣っている点が多いとしたら――。現役職員は「いまのままでは職員が苦労するばかりだ」と身内を批判する。

 前編に続いてJA共済連の腐敗ぶりを明かしてくれるのは、埼玉県本部(JA共済連埼玉)の現役職員である(以下、「 」内はすべてそのコメント)。

 JA共済連は、県本部を介して地域のJAにノルマを割り振っている。地域のJAだけでなく一部の県本部でも実質的にその達成が義務化され、職員やその家族がやむなく不必要な契約を結ぶ「自爆営業」が横行してきた。

競合他社より1年以上遅い商品開発

 自爆営業をなくすには、顧客にとって商品やサービスを魅力的なものにすることが前提となるはず。それが唯一できるのは、商品の企画と開発を請け負うJA共済連の全国本部である。

 ところが現役職員によると、全国本部はそれに無頓着であるように見受けられるという。その一つの現れは商品開発の遅さだ。

「JA共済の顧客は、時代に応じた適切な保障を受けられない可能性があるんです。なぜなら、競合他社より商品開発が必ず1年以上遅れるから。JA共済連が保険業界に先駆けて新商品を出したという話は、いまだかつて聞いたことがありません」

 その証左として現役職員が挙げるのは、新商品の市場への投入や既存商品の内容の変更に伴う約款の改訂「仕組改訂」。その資料には、次のような説明文が載ることが当たり前になっている。

「保険業界では、近年○○の保険や保障が主流となってきている。○○生保が○○保険を××年に新発売し、その後□□生保が続いて新商品を発表。JA 共済でも組合員利用者に安心を提供する為、○○保険を新設する」

とくに驚いた「弁護士費用保障特約」

 開発のあまりの遅さで現役職員がとくに驚いた商品は、事故時に損害賠償を請求するため弁護士に委任したり相談したりする費用を保障する「弁護士費用保障特約」である。……

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カテゴリ: 社会 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
窪田新之助(くぼたしんのすけ) ジャーナリスト 1978年、福岡県生まれ。明治大学文学部を卒業後、日本農業新聞に入社。 記者として国内外で農政や農業生産の現場を取材し、2012年よりフリーに。2014年、米国務省の招待でカリフォルニア州などの農業現場を訪れる。 著書に『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』(共に講談社+α新書)、『データ農業が日本を救う』(インターナショナル新書)、『農協の闇 』(講談社現代新書)、『誰が農業を殺すのか』(共著、新潮新書)、『人口減少時代の農業と食』 (ちくま新書)などがある。ご意見や情報のご提供は、以下のアドレスまでご連絡ください。shinkubo1207★gmail.com(★は@に書き換えてください)
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