
1月22日、ヒンドゥー教の聖地とされるインド北部ウッタルプラデシュ州のアヨディヤで、人々の篤い信仰を集めるラーマ神をまつった巨大寺院が完成し、盛大な落成式が行われた。
式典にはナレンドラ・モディ首相ら与党・インド人民党(BJP)幹部のほか、BJP最大の支持母体であるヒンドゥー至上主義団体・民族奉仕団(RSS)のモハン・バグワット総裁をはじめ、クリケットの元スター選手で国民的英雄のサチン・テンドルカル、巨大財閥リライアンス・グループ総帥のムケシュ・アンバニ、人気のヨガ指導者バーバ・ラームデブ、ボリウッド映画スターのアミターブ・バッチャン、そして「ムトゥ 踊るマハラジャ」で知られる俳優ラジニカーントなど約7000人の著名人が招待された。
寺院内部には高さ1.3メートルのラーマ神像が据えられ、スピーチしたモディ首相は「新時代の到来だ」と祝辞を送った。式典の模様は国営テレビなどでライブ中継され、翌23日の一般公開では約30万人の参拝客が長い列をつくった。
ラーマ寺院の敷地面積は、庭や回廊なども合わせると約28.3万平方メートル(東京ドーム6個分)、総工費は2.17億ドル(約320億円)。現地のヒンドゥー教団体が管理しており、建設費の多くは寄付でまかなわれたと見られるが、BJPモディ政権の全面的バックアップがあったことは周知の事実だ。
長年争った聖地の帰属
インドの人口の約8割を占めるヒンドゥー教徒にしてみればめでたい行事だったかもしれないが、この国家主導の寺院建設は様々な問題をはらんでいる。寺院の敷地には、もともと16世紀のムガール朝時代に建てられたモスク(イスラム礼拝所)があった。過激なヒンドゥー教徒らは「アヨディヤはラーマ神の生誕地。もともとモスクができる前にはヒンドゥー寺院があった」と主張し、長年イスラム教徒と帰属を争ってきた。
1992年12月、BJPの政治家らに扇動された数千人の群衆がモスクを破壊するという事件が起きた。……

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