日本では 「もしトラ」の状況が「ほぼトラ」になったとして、トランプ再選が確実のような見方も多くでているが、選挙は半年以上先であり、実際のところ、ジョー・バイデンが勝つのか、ドナルド・トランプが勝つのかは、神のみぞ知るという状況にある。
しかし「ほぼトラ」と考える人が増えている理由は理解できる。トランプ氏が今回の共和党予備選において圧倒的な支持を得て、3月5日のスーパーチューズデーで指名獲得を確実にしたからだ。そして共和党の「トランプ化」の進行を強く印象づけることになった。
8年前より進展した共和党のトランプ化
2016年にトランプ氏が大統領に当選したときの共和党の予備選は、状況がまったく違っていた。トランプ氏は共和党のアウトサイダーであり、当時共和党執行部はトランプ氏を泡沫候補と考えていたが、予備選で着実に得票を重ねていき、3月のスーパーチューズデーが終わった時点では、首位ではあったが決着がつかないままだった。5月に2位につけていたテッド・クルーズ上院議員が撤退を表明すると、ラインス・プリーバス共和党全国委員長は、当時の共和党の価値観を全く反映していない「トランプ候補」を、ツイッター(現X)で「事実上の指名獲得者」と呼ぶ苦渋の選択をした。プリーバス氏はこの功績も評価されトランプ政権の初代・大統領首席補佐官となり、トランプ氏と既存の共和党の価値観や政策との調整を図るが、トランプ主義を徹底しようとするスティーブ・バノン首席戦略官(当時)らトランプ側近と衝突して早々に辞任した。
今年、3月5日のスーパーチューズデーで、トランプ氏の指名獲得が確実になると、共和党全国委員会は8日、次期委員長に、トランプ氏に近いマイケル・ワトリー氏を起用し、ナンバー2の共同委員長にはトランプ氏の次男エリック氏の妻ララ・トランプ氏が就任することが決定された。
トランプ氏は2020年の大統領でバイデン氏に敗北したにもかかわらず、むしろ共和党内の支持を固め、共和党の「トランプ党」化が着実に進んでいることは、米国外からみれば衝撃的なことだった。
実際のところ、共和党のトランプ化はどの程度進んでいるのか。そして、それは不可逆的な動きなのか。それを理解する鍵は、共和党予備選でトランプ氏に挑戦し、3月に撤退するまで、堅実に反トランプ票を集めてきたニッキー・ヘイリー候補とその支持者の動向にある。しかも、それは11月の大統領選挙の帰趨を握ることにもなりそうだ。
ニッキー・ヘイリー支持の票はどこに?
共和党予備選では、トランプ氏の圧倒的な強さとともに、ヘイリー元国連大使(トランプ政権)の着実な得票が注目された。ヘイリー氏はワシントンDCとバーモントの二州で勝利し、ニューハンプシャーではトランプ54.3%に対して43.3%の票を獲得、サウスカロライナではトランプ59.8%に対して39.5%、本選のカギを握る接戦州でもミシガン26.6%、ノースカロライナ23.3%、バージニア35.0%、ジョージア13.2%、アリゾナ17.8%、フロリダ13.9%、オハイオ14.4%という票を獲得している。
接戦となるであろう本選で、これらの票の行方が勝利の帰趨に影響することは間違いない。バイデン陣営はこの状況をよく理解して、選挙キャンペーンに反映させている。バイデン大統領の次席補佐官から、再選のために民主党の選挙対策の責任者に起用されたジェン・オマリー・ディロン氏は、3月29日のニューヨーク州でのバイデン選対の資金委員会で、共和党予備選でヘイリーに投票した層は、バイデンが獲得できる票だと発言した。
そしてバイデン陣営は、ネット上の選挙広告で、トランプ氏が「予備選でヘイリー氏に投票した人達の票は必要ない」と発言した実際の動画を使い、「アメリカを救うためにバイデン・ハリス陣営に参加を」(Save America. Join us. Biden/Harris)という選挙広告をウェブ上で流している。
この広告の根拠となるのは、ヘイリー支持層の傾向である。
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