外交・安全保障のビジョンを示さず、オバマに揶揄されたロムニー

執筆者:渡部恒雄 2012年9月14日
エリア: 北米

 共和党と民主党の党大会が終了した。引き続き接戦ではあるが、得点を上げたのは現職のオバマ陣営だった。ギャラップ社のデイリーベースの世論調査のトラッキングによれば、共和党大会(8/27-30)と民主党大会(9/3-6)の間の支持率はオバマ対ロムニーで47%対46%であったが、民主党大会後は49%対44%と明らかにリードを広げた。また、オバマとロムニーの指名受諾演説について、素晴らしい(excellent)と良い(good)の合計が、オバマの43%に対して、ロムニーは38%という差がでた。

 今回の両党大会を通して、ベストの演説と指摘されているのが、民主党のビル・クリントン元大統領の演説だった。クリントンは、オバマの経済政策が的確であり、少なくとも4年前よりも状況をよくしており、自分を含めて他のどのような大統領が取り組んでもオバマ以上の結果を残すことはできなかった、というメッセージを有権者に送った。これは、オバマ大統領本人が話せば自己弁護となって効果が薄く、経済学者が説明しても人々にアピールしない。かつて米国の経済の黄金時代をつくりだしたクリントン大統領ならではの、見事なスピーチだった。特に、共和党に対して、「自分たちが混乱を作り出しオバマに放り投げ、オバマが後始末をしていてまだ終わっていないのに、自分たちにやらせろといっている」という構図は、わかりやすかった。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席研究員。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
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