饗宴外交の舞台裏
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拡大欧州に共有された“アウシュビッツ”という歴史
出張した一月下旬のパリには寒波が襲っていた。テレビをつけても、新聞を広げても、アウシュビッツ強制収容所がナチス・ドイツから解放されて六十周年(一月二十七日)の話題で持ちきりだった。 第二次大戦中、フランスからは数十万人のユダヤ人が強制収容所に送られた。それはドイツ軍占領地域だけでなく、対独宥和のビシー政権支配下においても例外ではなく、ユダヤ人狩りでフランス官憲はドイツ軍に積極的に加担した。ユダヤ人抑圧はアウシュビッツを最初に解放したソ連にも、収容所が置かれたポーランドにも言える。バチカンにしても時のローマ法王はナチスに妥協的だったと、いまなお批判されている。

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