中東―危機の震源を読む
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対テロ戦争の「終わり」と「新たな始まり」
アフガニスタンで、米軍およびNATO(北大西洋条約機構)諸国有志が主導する多国籍軍からアフガニスタン国家治安部門(Afghan National Security Forces:国軍と警察からなる)に、全土での治安権限が移譲された。それと同時に、米高官はターリバーンとの直接交渉を近く開始することを明かした。そしてターリバーン側も「暴力の放棄」を宣言してこれに歩調を合わせている。
これらの出来事は、2001年の9.11事件を受けてブッシュ政権が開始した「対テロ戦争(war on terror)」がついに終結することを意味する。2期目のオバマ政権は、軍事的な手段を前面に出したブッシュ政権の対テロ戦略の重い荷をようやく肩から下ろそうとしている。しかし米国と国際テロリズムとの闘争そのものが終わるわけではない。新たな現実を認識し、それに適応した新たな対処策を模索している。5月23日のオバマ大統領の国防大学での演説では、国際テロリズムの現状を踏まえた再定義と、新たな対策の方向性が示されている。

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