中東―危機の震源を読む (13)

「取り残された若者たち」をフランスはどう扱うのか

執筆者:池内恵 2006年1月号
エリア: ヨーロッパ 中東

 フランス各都市の郊外で十月二十七日から三週間にわたって破壊活動が続き、約九千台の車が焼かれ三千人近くが逮捕された。 フランスが抱える移民統合の問題に解決の見通しは立っていない。そもそも車が破壊される現象自体は、以前から一晩に「数十台」という規模で発生しており、今回のように集中的・連鎖的に行なわれてはじめて「騒乱」として認識され報道された。十一月十七日にフランス警察当局が行なった「正常化」宣言にしても、前夜に焼き討ちにあった車が全国で「九十八台」に留まったことをもって「フランス各地が正常な状況に戻った」と判定しているほどである。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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