北朝鮮「無謀な挑発」の核心は何か

執筆者:平井久志 2009年7月号
エリア: アジア

なぜ、これまでの「論理」からは考えられない行動をとり続けるのか。謎を解くカギは四月の最高人民会議での「決定」にありそうだ。「国連安全保障理事会がさらに挑発をしてくる場合、それに対処するわれわれのさらなる自衛的措置が不可避となるであろう。朝鮮半島では冷戦がそのまま持続している。国連安保理がつくり上げた『国連軍司令部』がまさに、朝鮮戦争の休戦協定を締結した一方(の当事者)である。国連安保理の敵対行為は休戦協定の破棄になる」 北朝鮮外務省スポークスマンの五月二十九日付談話の一節である。 北朝鮮の動向が尋常ではない。後継体制は、金正日総書記の三男、金正雲への世襲が実質的に進みつつあるように見える。その一方で、五月二十五日に行なった二度目の地下核実験(二〇〇六年十月以来)に対して国連安保理が制裁決議を採択した場合には、「自衛的措置」として、核実験や長距離弾道ミサイルの発射どころか、朝鮮戦争の休戦協定の破棄を宣言する可能性まで示唆した。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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