インドでも高まる中国の軍事的脅威

執筆者:春名幹男 2010年10月5日
エリア: 北米 アジア

 8月に公表された、中国軍事動向に関する米年次報告書。日本を含む東アジア諸国は、中国軍が東シナ海や南シナ海の領有権問題などで、新たに軍事能力を拡大しようとしていることに注目した。

 しかし、南アジアのライバル、インドは同じ報告書の全く違う部分に注目した。インドのメディアは「中国軍がインド国境に中型核ミサイルの新基地を建設」とセンセーショナルに報じた。しかし、その報道は全く誤報だった、と米科学者連盟(FAS)のクリステンセン研究員は指摘している。

 最新の商業衛星写真で、インド国境地帯ではなく、中国中部、青海省デリンガの西230キロのミサイル基地に東風21C中距離弾道ミサイルを配備したことが分かったというのだ。東風21Cは射程1800キロ。液体燃料型から固体燃料型に改良中で、移動式だ。実は、東風21Cについては、8月の国防総省報告書も指摘していたが、インドのPTI通信社が読み違えたらしい。尖閣諸島の問題と同じように、インドでも感情的に反中国意識が高まっているようだ。「中国の脅威」をめぐって日印協議を始める必要があるが、感情を抑えて、静かに緊密にやるべきだ。
 

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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