「殺されたくない」 関谷滋・坂元良江編『となりに脱走兵がいた時代』

執筆者:船橋洋一 2000年2月号

 戦後、新宿に風月堂という名の音楽喫茶があった。 一九六〇年代半ば、米国の旅行案内で「日本のグリニッチヴィレッジ」などと紹介されたこともあって日米の若者たちが夜遅くまで粘っては、だべっていた。 一九六七年十月二十六日夜遅く、その前を通りかかった東大生、山田健司は店から出てきた二人の若い米国人に呼び止められた。「安く泊まれるところはないか」 掌に出して見せた所持金は百三十円しかない。「山谷のドヤ街にも泊まれそうにない」と山田は思った。「私の部屋に来ないか」「四人泊まれないか」 どうやらもうふたり、仲間が店内にいるらしい。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
船橋洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。近著に『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)、『自由主義の危機: 国際秩序と日本』(共著/東洋経済新報社)、『地経学とは何か』(文春新書)、『カウントダウン・メルトダウン』(第44回大宅賞受賞作/文春文庫)など著書多数。
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