「殺されたくない」 関谷滋・坂元良江編『となりに脱走兵がいた時代』

執筆者:船橋洋一 2000年2月号

 戦後、新宿に風月堂という名の音楽喫茶があった。 一九六〇年代半ば、米国の旅行案内で「日本のグリニッチヴィレッジ」などと紹介されたこともあって日米の若者たちが夜遅くまで粘っては、だべっていた。 一九六七年十月二十六日夜遅く、その前を通りかかった東大生、山田健司は店から出てきた二人の若い米国人に呼び止められた。「安く泊まれるところはないか」 掌に出して見せた所持金は百三十円しかない。「山谷のドヤ街にも泊まれそうにない」と山田は思った。「私の部屋に来ないか」「四人泊まれないか」 どうやらもうふたり、仲間が店内にいるらしい。

カテゴリ: カルチャー
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