ABC型 松本俊一『モスクワにかける虹』

執筆者:船橋洋一 2000年9月号

「シルク・ハットをかぶった番人が、いつもいかめしい制服姿で立っていて、いかにもビクトリア王朝時代をしのばせる。その横丁の中で、一番大きいと思われる建物は、ソ連の大使館であった」 松本俊一は、日ソ交渉の回想録をこのように書き出している。 一九五五年六月一日、ロンドンで始まった日本の松本俊一全権大使とソ連のマリク駐英大使による日ソ国交回復交渉の予備交渉は、このソ連大使館で行なわれた。 松本に託された仕事は、在ソ抑留邦人の帰還、漁業問題などさまざまだったが、最大の課題は戦争状態の終結と国交回復、なかでも領土問題の解決だった。松本とマリクは、正式の平和条約締結によって、日ソ間の国交正常化をはかるという「正攻法」を取ることで合意した。マリクは戦時中、駐日大使を務めていた。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
船橋洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。近著に『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)、『自由主義の危機: 国際秩序と日本』(共著/東洋経済新報社)、『地経学とは何か』(文春新書)、『カウントダウン・メルトダウン』(第44回大宅賞受賞作/文春文庫)など著書多数。
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