湾岸戦争から八カ月後の一九九一年十一月、クウェートはあちこちに戦争の傷跡を残しながらも、改革への希望にあふれていた。「民主化こそクウェートの安全保障の基礎。そのためには女性にも参政権が与えられるべきです」。女性ジャーナリストのジャセム・ムッタワさんはエネルギッシュに女性の政治参加の必要性を強調した。だが十年後のクウェートで、ムッタワさんの希望は未だに実現していない。 イスラム世界では一様に女性の政治参加は阻害されている、というのが一般的なイメージだろう。しかし、実態はまちまちだ。インドネシアではつい最近、女性大統領が誕生したし、トルコやパキスタンは女性首相が活躍した経験を持つ。アラブ諸国でも共和制をとっている国はほとんど基本的に女性の参政権を認めているし、王制のヨルダンやモロッコも同様だ。これと対照的なのが王制や首長制の湾岸アラブ諸国だ。サウジアラビアでは参政権どころか、未だに女性は外出が制限されているし、車の運転もできない。それでも変化の波は押し寄せている。
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