アメリカは「戦争目的」を見失ったか

9.11事件から2年半たった現在、世界は依然として「対テロ戦争」という世界戦争を戦っている。その主戦場となったイラクの情勢を、国際社会はどう評価すべきなのだろうか。 六月末に予定されている主権移譲を前に、イラク情勢は緊迫の度合いを強めた。多くの日本人にとっては、これは日本人人質事件として示されたが、人質事件はその一面を劇的に示したにすぎない。ファルージャやナジャフにおけるアメリカ軍と武装抵抗勢力との間の戦闘激化こそが、その背景において、極めて重要な意味を持っていた。 一方、東アジアでは、朝鮮半島をめぐる動きが依然として不透明である。二月に二回目の六者協議が行なわれたが表立った前進はみられなかった。金正日の中国訪問や、彼の帰国直後の列車事故をめぐる人道支援などが、今後の情勢にどのような影響を及ぼすかも定かでない。さらに、拉致問題をめぐる日朝交渉も本稿執筆時点では結果は明らかでない。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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