「第2のウイグル」内モンゴル自治区の知られざる「弾圧の実態」

執筆者:楊海英
2021年6月3日
タグ: 中国
エリア: アジア
モンゴル語での教育禁止に反対するひとびと(C)EPA=時事
中国における少数民族への弾圧は、新疆ウイグル自治区と同様、内モンゴル自治区でも深刻だ。文革期のジェノサイド、改革開放後の強制定住、そして昨年始まったモンゴル語教育の禁止。民族の伝統が根こそぎ奪われようとしている。

 

歴史教育も中国語で

「今の状況は絶望的です」

 そう話すのは、静岡大学の楊海英教授だ。内モンゴル自治区に生まれ、日本への留学を経て帰化をした異色の文化人類学者である。

「文化大革命の時代に徹底的に弾圧された記憶があるため、多くの人は政治に口出しせずお上の言うことを大人しく聞こうという現実主義でやってきました。それなのに、最後の防波堤まで壊されたという気持ちです」

 中国政府が内モンゴル自治区の小中学校でモンゴル語による教育を禁止したのは2020年6月のこと。自治区内の小中学校は中国語学校とモンゴル語学校に分かれているが、モンゴル語学校でも中国語で授業を行うよう義務付けられたのだ。

カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
楊海英(ようかいえい) 静岡大学人文科学部教授。1964年、南モンゴル・オルドス高原生まれ。モンゴル名はオーノス・チョクト、帰化後の日本名は大野旭(おおの あきら)、楊海英は中国名のペンネーム。北京第二外国語学院大学日本語学科卒業後、訪日。国立総合研究大学院大学博士課程修了後、2000年に帰化。2006年より現職。著書に『モンゴルとイスラーム的中国』(風響社)、『墓標なき草原――内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(岩波書店)、『最後の馬賊 「帝国」の将軍・李守信』(講談社)、『モンゴル人の中国革命』(ちくま新書)、『独裁の中国現代史 毛沢東から習近平まで 』(文春新書)、『内モンゴル紛争』(ちくま新書)、『紅衛兵とモンゴル人大虐殺 草原の文化大革命 』(ちくま選書)など多数。
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