経済冷戦下、「意志」を手放した東芝の忖度と凋落30余年

執筆者:後藤康浩 2021年8月16日
エリア: その他
1987年7月、米議会からの反発を受けて、引責辞任の記者会見をする東芝の佐波正一会長(左)と渡里杉一郎社長   ©︎時事
現在の米中冷戦にも似た衝突を日米が続けた80年代、「東芝機械ココム違反事件」から名門凋落は始まった。以後、外に米政府の顔色を窺い、内で経産省の意向を汲んだ東芝は、不合理な経営判断とガバナンス劣化の泥沼に落ちる。国策と経営が対立する時、企業は何を選ぶべきか。

「東芝」という社名にはもはや食傷した読者が大半だろう。2015年以降、次々、噴出する粉飾決算など不祥事、主力事業の切り売り、ガバナンスの劣化をみれば既に日本を代表する名門企業としては幕を閉じたことは明らかだ。世間の東芝への関心は、外国ファンドに命綱を握られ、零落していく“貴種”の行く末を見届けることでしかない。東芝の没落については『東芝の悲劇』(大鹿靖明著)、『東芝 原子力敗戦』(大西康之著)はじめ優れた書籍が数冊出ており、多くが「経営者の失敗」に原因を求め、議論は尽くされた感がある。ここでは、日米経済関係という別の角度から東芝を改めて論じてみたい。国家と産業の狭間に沈んだ名門の悲劇である。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
後藤康浩 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』などにも出演していた。現在も幅広いメディアで講演や執筆活動を行うほか、企業の社外取締役なども務めている。著書に『アジア都市の成長戦略』(2018年度「岡倉天心記念賞」受賞/慶應義塾大学出版会)、『ネクスト・アジア』(日本経済新聞出版)、『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(日本経済新聞出版)、『アジア力』(日本経済新聞出版)、『強い工場』(日経BP)、『勝つ工場』(日本経済新聞出版)などがある。
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