「投資家・孫正義」を疑う市場――ソフトバンク「300年成長神話」の危急存亡(2)

[連続企画]

執筆者:後藤逸郎 2022年5月9日
SBGがいちど“見限った”エヌビディアだが、その技術の市場価値はますます高まっている (C)CFoto/時事通信フォト
ソフトバンクグループ(SBG)による米半導体メーカー「エヌビディア」(NVIDIA)への投資プロセスを辿り直すと、「資本家」でありたいと願いながら常に「投資家」として行動せざるを得ないという、二つの自画像の狭間でもがく孫正義氏の姿が浮かび上がる。そしてその迷走は、孫氏の投資家としての力量にも、市場が懐疑を抱く原因になってしまっているのではないだろうか。(こちらの第1部『消えてゆく孫正義氏と“ハゲタカ”との境界線』から続きます)

 SBGは2016年9 月、英半導体設計会社「アーム」(Arm)を約240億ポンド(当時約310億ドル、約3兆3000万円)で買収した。その約3カ月後、SBG はエヌビディア株を購入している。

 エヌビディアは1993年に設立され、ゲーム用パソコンやデータセンター向けの画像処理半導体(GPU)や、GPUを使ったビデオカードを製造してきた。当初、GPUはパソコンの中央演算処理装置(CPU)の画像処理を補助するような位置付けだったが、膨大な計算が求められる人工知能(AI)のディープラーニングに向いていることからその評価が高まった。中国で仮想通貨のマイニング(中国では21年5月に禁止)用にGPU需要が急増した波に乗り、エヌビディアの業績は急伸。株価は2018年10月、当時の過去最高の終値289.36ドルをつけるに至った。

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
後藤逸郎(ごとういつろう) 1965年富山県生まれ。ジャーナリスト。金沢大学法学部卒業後、1990年毎日新聞社入社。姫路支局、和歌山支局、大阪本社経済部、東京本社経済部、大阪本社経済部次長、週刊エコノミスト編集次長、特別報道グループ編集委員、地方部エリア編集委員などを経てフリーランスに。著書に『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』『亡国の東京オリンピック』がある。
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