ソフトバンクG「冬の時代」に出口が見えない

執筆者:後藤逸郎 2023年2月24日
エリア: アジア
本業で稼げない状態が続いている(C)AFP=時事
ソフトバンクグループ(SBG)がマクロ経済の変動に伴う荒波にもまれている。世界的なインフレに伴う海外中央銀行の利上げが株式市場の低迷と資金調達環境の悪化を招き、SBGの企業価値は目減りする一方だ。

 SBGが2月7日発表した2022年10〜12月期決算は、純損失が7834億円の赤字に転落した。6〜9月期決算は黒字だったものの、これは虎の子の中国EC大手アリババ・グループ・ホールディング株の売却益によるもので、投資ファンド事業は4四半期連続の赤字となった。保有するユニコーン企業など未公開株の公正価値がマイナスとなっており、本業で稼げない状態が続いている。

依然として続く経営への「低評価」

 SBGの孫正義会長兼社長は22年8月8日、同年4〜6月期決算のプレゼンテーションでSBGが「冬の時代」に入ったとの認識を踏まえ、「冬の期間がどのくらい続くのかは分からない。上場株も冬の時代だが、ユニコーン企業の冬の時代の方が長く続くだろう」と“予言”した。

 その後のSBGの決算は孫氏の予言通りになっている。SBGが経営の重要指標と位置づける時価純資産(保有資産価値から純有利子負債を差し引いた値=ネット・アセット・バリュー=NAV)は22年6月末で18兆5000億円、純有利子負債が保有株式価値に占める割合を示す負債カバー率(LTV)は同14.5%だった。その数値は22年12月末に13兆9000億円(NAV)、18.2%(LTV)に悪化している。

 2月7日時点の時価総額は約10兆8000億円で、NAVよりも3兆円低かった。これはSBGの保有株を個別に買うよりも、SBG本体を買った方が安いことを意味している。投資家がSBGの経営を低く評価することによる「ディスカウント」だとして、孫氏が嘆いてきた現象だ。21年9月末に約8兆円あった「ディスカウント」からは改善しているように見えなくもないが、これはアリババ株を手放すなどして、NAVの方が下がったことによる。

為替変動というリスク要因

 SBGはNAVの減少理由として、円高による為替差損が1兆5000億円、株価下落が4000億円、自社株買いが5000億円などを挙げる。

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
後藤逸郎(ごとういつろう) 1965年富山県生まれ。ジャーナリスト。金沢大学法学部卒業後、1990年毎日新聞社入社。姫路支局、和歌山支局、大阪本社経済部、東京本社経済部、大阪本社経済部次長、週刊エコノミスト編集次長、特別報道グループ編集委員、地方部エリア編集委員などを経てフリーランスに。著書に『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』『亡国の東京オリンピック』がある。
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