「決算発表でのプレゼンは、当面の間は今日が最後」
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は、2022年9月中間決算(国際会計基準)の説明会冒頭で淡々と事実上の“投資家一時引退”を宣言した。中国EC大手アリババグループ・ホールディングの莫大な上場含み益を源泉にSBGを投資会社へ変えた孫氏が、アリババ株の含み益の枯渇とともに投資の表舞台から去る。「魔法の杖」が折れた孫氏の復活は容易ではない。
SVFは4兆3535億円の投資損失
11月11日に発表されたSBGの中間決算は、純損益が1291億円の赤字だった。投資損益は8496億円の赤字。この中には経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングへの投資1億ドル(約140億円)も含まれる。純損益は前年同期の黒字からの赤字転落だ。
深刻なのは投資損益の内幕だ。中核事業のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が4兆3535億円の投資損失を計上した。それを8496億円の赤字にとどめたのは、アリババ株の売却益3兆5247億円だ。これはSVFではなく、持ち株会社SBGの投資事業益にあたり、SVFは3四半期連続の赤字だった。
SVFは孫氏がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子を口説き落とし、サウジ政府系から450億ドル(当時約5兆円)の出資を取り付け、これを基盤にシェアオフィス大手ウィーワークなどへの大型投資を実施してきた。SVFはサウジに対し年利7%の利益を確約しており、SBGの負担は大きい。
今回のアリババ株売却益は会計上のもので、キャッシュが生まれるわけではないが、SBGは背に腹は替えられなかったようだ。国際会計基準のルールを活用し、アリババ株の益出しを最大化した点からもSBGの困窮ぶりが窺える。
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