屋良朝苗:苦渋の思いで迎えた日本復帰と「平和経済」の構築

執筆者:野添文彬 2022年6月5日
タグ: 日本
エリア: アジア
通貨の切り替えとともに起きた物価の急上昇に抗議の声が上がった(C)時事
 
米軍基地の大半が維持されたままの日本復帰を苦渋の思いで迎えた屋良朝苗は、基地依存経済から脱却した「平和経済」の構築を目指し、政府と「沖縄振興開発計画」の策定を進めていく。しかし、その原案をめぐっても両者の対立が浮き彫りになる。

 沖縄の日本復帰は、第2次世界大戦後の国際秩序が大きく変動する中で実現した。

 リチャード・ニクソン大統領が1971年7月に訪中計画を突如発表し、翌72年2月に訪中したことは、米中対立を基調としていたアジアの国際政治を大きく転換させた。

 71年8月には、ニクソン大統領がドルと金の交換停止などの新経済政策を発表し、国際経済を揺るがせた。この出来事は、日本復帰によってドル経済圏から円経済圏へと移行しようとする沖縄にとっても大きな衝撃であった。しかも、その後1ドル360円から1ドル308円へと為替レートが変更されたことで、大きな損失をこうむる可能性が出てきたのである。

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執筆者プロフィール
野添文彬(のぞえふみあき) 沖縄国際大学法学部 地域行政学科准教授。1984年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、同大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、日本外交史、沖縄基地問題。主な著書に『沖縄返還後の日米安保: 米軍基地をめぐる相克』(吉川弘文館/2016年)、『沖縄米軍基地全史』(吉川弘文館/2020年)がある。
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