毛沢東「延安整風」と習近平「反腐敗」の埋まらぬ懸隔

執筆者:宮本雄二 2022年6月29日
エリア: アジア
権力集中を求める習近平の前には鄧小平が立ちはだかっている (C)REUTERS/Jason Lee
習近平の「反腐敗」は毛沢東が権力掌握を完成させた「延安整風」に準えることができる。しかし、峻烈な人間改造による粛清を今に再現することは不可能だ。そしてそれ以上に、毛沢東には国民に信頼感を与えるカリスマ性があった。習近平への個人崇拝が根付いていないことは、河北省唐山市で起きた女性暴行事件のような出来事で世論が容易く沸騰することでも窺われる。

   2012年11月15日、習近平政権が誕生した。同月29日に「中国の夢」を打ちだし、12月31日には党建設と反腐敗を進める意図表明をした。翌年の1月22日には、ついに「中国の夢」の実現の前提として「反腐敗」を全面的にやると宣言した。しかも「トラもハエもたたく」と大見得を切り、江沢民を背景とする既得権益層に宣戦布告をしたのだ。これには筆者も驚いた。実績もバックも足りない習近平が、こんなに早く、これほど大きな目標を打ちだしてしまったからだ。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宮本雄二 みやもと・ゆうじ 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日中友好会館副会長、日本日中関係学会会長。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』などがある。
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