「欧州かアジアか」――アメリカの二択?
Foresight World Watcher's 4Tips
今週もお疲れ様でした。ロシア・ウクライナ戦争開始から間もない2022年3月、米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌が組んだ特集「U.S. Grand Strategy After Ukraine(ウクライナ後のアメリカのグランドストラテジー)」に、故・中山俊宏慶應義塾大学教授は「Maintain the Strategic Focus on China(中国への戦略的フォーカスの維持を)」という論考を寄せています。
「この戦争は、1カ月前まで中国とインド太平洋にほぼ完全に焦点を当てていたアメリカの大戦略をどう変えるか」(FP副編集長のステファン・テイル)との問いに7人の識者が答える内容でしたが、中山氏は「中国からの脅威は構造的である」と強調、ワシントンは短期的には欧州戦線に関心を向けロシアに対抗するしかないが、中国は中長期的に最も重要な脅威であり続けると指摘します。そして「両戦線でのアメリカの同盟国とパートナーは、より積極的にコミットするしかないだろう」とも記しています。
その後のイスラエル・ハマス戦争によって、いまやアメリカはロシア・中国のみならず中東も加えた三正面に対応しており、中山氏の見通した同盟国・パートナー国のコミットメントの重要性は、さらに大きくなりました。そして同時に、アメリカと同盟国・パートナー国の提携関係それ自体も複雑性を増しています。
「アメリカが選ぶべきは欧州かアジアか」との問いが海外メディアでは盛んに提出されていますが、これを二者択一の議論にしてしまわぬために、同盟国側からのビジョンの提示が一層重要になっていると言えそうです。
フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事4本、皆様もよろしければご一緒に。
Rich parts of Asia are on the hunt for immigrants【Economist/9月5日付】
「不平不満が結果につながるという教訓を学ぶには、韓国に目を向けるといい。経済学者たちは同国の生産年齢人口の減少が不足を生み出すと長年警告してきたが、ビジネスロビーほど熱心に不平を唱えた者はほとんどいなかった。彼らの圧力がようやく結果を生み出した。昨年、『非専門職』労働者を対象とするE-9ビザの割り当て枠は12万件と、過去最多を大幅に上回る数字となった。今年のE-9ビザの割り当て枠は16万5000件に増加する予定だ。2023年には外国人労働者の総数は9%増加した」
「これはトレンドの一部だ。昨年、日本、台湾、シンガポールでは移民労働者の数が過去最高を記録した。日本の外国人労働者数は2023年には200万人に達して前年から12%増となり、10年前の約3倍に達した。シンガポールと台湾の外国人労働者数は2019年比でそれぞれ7%%、11%増加している。台湾では2022年施行の制度により、豊富な実務経験を持つ中技能の移民が居住者になれる。シンガポールは『戦略的経済優先事項』に沿った職種を対象に低・中技能ビザの制限を緩和している。シンガポールの狙いは日本も共有しており、日本は2019年、看護師など人材不足に悩む業界を対象に『特定技能労働者』を受け入れるプログラムを開始した」
英エコノミストは「アジアの富裕国は移民を求めている」(シンガポール発8月29日付)で、東・東南アジア諸国の移民獲得熱の高まりを伝えている。
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