イスラエル・イラン、印パ——変わり続ける「現代の戦争」に最新分析

Foresight World Watcher's 4 Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2025年7月21日
エリア: アジア 中東
インドとの航空戦でパキスタンは高度なキル・チェーンを確立していた[パキスタン空軍の中国製戦闘機J-10C戦闘機](C)AFP=時事

 自民党を中心とした政権が衆参両院で過半数を割るのは1955年の結党以来初のこと。海外でもこの参院選は自民の「歴史的大敗」と捉えられ、多くのメディアが石破茂首相に辞任圧力が高まるのは確実と伝えています。

 その首相自身は、「相互関税」の発動期日が8月1日に控えるなど国益を左右する政治日程が続くなか、「比較第一党の責任」を強調しつつ続投の意向を示しました。しかし、そもそも参院過半数を維持できる「自公で50議席」を勝敗ラインに設定したのは本人ですから、これで事が納まるとは考えにくい。麻生太郎・自民党最高顧問も続投を認めない方針と伝えられます。

 仮にこの先も石破政権が日米関税交渉にあたったとして、自動車や農業など利害調整が深く絡むテーマをまとめ上げるのは難しいと指摘します(たとえば7月20日付米ウォール・ストリート・ジャーナル紙「Japan Election Throws a Wrench in Trade Talks(日本の選挙が貿易交渉に支障)」など)。

 ただ、一方で興味深いのは、自民苦戦が明確になったこの数週間、石破政権の背を押すような言葉もしばしば目に入ってきたことです。たとえば7月6日付米ワシントン・ポスト紙社説「Japan is a case study in how not to cultivate an ally(対日関係は同盟の築き方を誤っている典型例)」の、以下のようなくだり。

「中国の外交政策の強硬化、北朝鮮の核兵器、そしてモスクワと北京の関係強化は、日本をこれまで以上に重要な同盟国にしていると言える。[略]/日本は第2次世界大戦後にアメリカ合衆国が制定した平和憲法の限界を克服し、防衛費を増額している。また、米国と緊密に協力して共同軍事力の構築に取り組んでいる。/アメリカは同盟国を必要としている。自国を守るため、そしてもちろん貿易のためにも」

 こうした「日本に圧をかけすぎるな」との言説は、第2次トランプ政権が混乱の中で進める国際秩序再構築において、日本が一定の影響力と求心力を保持してもらわねば困るというメッセージでもありそうです。

 日本では参政党の支持獲得が話題を集めているものの、排外的ポピュリズムの増勢は、すでに欧米では顕著な潮流でもあります。海外メディアにとっても主要な注目点であるとはいえ、特段にセンセーショナルな扱いでもありません。むしろ、野党との連携を余儀なくされる政権運営で想定すべき、財政規律の緩みを警戒する議論の方が目立ちます。

 ただし、上記のような日本に期待されている影響力と求心力、言い換えれば「暴れるトランプに巧みに並走する同盟国」としての責任分担能力は、「自国ファースト」の延長線上には見つからないもののように思えます。“欧米並み”の排外的ポピュリズムに日本が絡めとられ、外交の力を失うとすれば、これまで日本が辛うじて保持した貴重なプレミア性が剥落することにもなるでしょう。

 日本についてはさらに深掘り分析も出てくると思いますが、それは次回以降として、今回のフォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事は以下4本。イスラエル・イラン戦争と印パ航空戦について、徐々に明らかになりつつある当事者国(および武器供給者としての米国、中国)の軍事能力に関する最新分析をピックアップしました。皆様もよろしければご一緒に。

Lessons Observed from the War Between Israel and Iran【Bilal Y. Saab, Darren D. White/War on the Rocks/7月16日付】

「6月に勃発したイスラエルとイランの直接対決は、中東における地政学的なエスカレーションとして近年で最も重要なもののひとつである。[略]イスラエル国防軍によるイランの核施設に対する計算された先制攻撃として始まったこの作戦は、サイバー、航空、海軍の交戦を含む多方面にわたる戦争へと急速に発展した」
「数日のうちに米国が125機以上の航空機と7機のB-2スピリット爆撃機を投入したミッドナイト・ハンマー作戦で紛争に加わり、B-2はイランの核インフラに対して14発のバンカーバスター爆弾[略]を投下した。米統合参謀本部議長のダン・ケイン将軍はこの作戦を『米国史上最大のB-2作戦攻撃』と表現した」
「イランは、弾道ミサイルとドローンによる攻撃、そしてサイバー攻撃を織り交ぜて報復した。[略]短期間ではあったが激しいものとなったイランとイスラエルの対立の間、こうした[ハマスやヒズボラ、フーシ派などイランの]代理勢力は、意味ある形では戦闘に参加できなかったり、内部の政治的制約のために戦意を持たなかったりという状態で、ほぼ沈黙を守った」

「12日間戦争」とも呼ばれるようになった軍事衝突について「イスラエル・イラン戦争に見る教訓」(7月16日付)を掲載したのは、軍事・安全保障を専門とする米国のオンラインメディア、「ウォー・オン・ザ・ロックス(WOTR)」。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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