「稼げる公共交通」の神話が地方衰退を加速する

執筆者:山田和昭 2025年12月25日
タグ: 日本 企業戦略
戦後の地方都市では、自動車依存を前提としたまちづくりが進んだ結果、駅前中心街はシャッター街化し、生活に必要なインフラの維持や行政サービスにかかる費用が増大していった[福島県の奥会津を走るJR只見線の列車](C)AaronChenPS2 / shutterstock.com
鉄道事業は本来「稼げるビジネス」であり、赤字を出した民間事業者を公費で助けるのは無駄――。実はこうした発想は、人口過密な一部の大都市圏で私鉄が発展した日本に特有の、世界的には極めて例外的な考えだ。地方都市ではむしろ、公共交通への投資が足りないために人々が自動車移動に依存し、ますます過疎化が進行する悪循環に陥っている。

問題は「公共交通の赤字」ではない

 日本の地方交通、特にローカル線や地域バス路線が赤字と存続の危機に瀕しているのは、単に少子化・人口減少に起因するものではない。より根深い問題は、「公共交通は稼げるビジネス」という認識が、世界的に見れば日本固有の、そして危険な神話であるという点にある。

カテゴリ: 経済・ビジネス 社会
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執筆者プロフィール
山田和昭(やまだかずあき) 日本鉄道マーケティング(https://jrmkt.com/)代表。1987年早稲田大学理工学部卒。IT業界(CSK, Lotus, COGNOS, SAS) にてマーケティングと営業業務を担当または統括。2012年由利高原鉄道(秋田県)ITアドバイザー。2014年若桜鉄道(鳥取県)代表取締役社長、翌年4月SL走行社会実験で同鉄道が地域の観光軸になることを実証。2017年津エアポートライン(三重県)シニアエキスパート、2021年近江鉄道(滋賀県)構造改革推進部部長。翌年、近江鉄道無料デイ、沿線連携イベントを立案・推進。2024年より現職、貨物鉄道論文賞最優秀賞受賞。著書『希望のレール』(祥伝社、2016年)
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