「4要因」のネクサスで掴む2026年、国際情勢「10のポイント」

執筆者:冨田浩司 2026年1月1日
エリア: グローバル
データ・センターの建設に伴う電力需給の逼迫は、電気料金の値上げの原因として米中間選挙の争点「アフォーダビリティ(家計負担の重さ)」に直結する[データ・センターの建設に抗議活動を行う人々=2025年12月13日、アメリカ・ジョージア州ディケーター](C)EPA=時事
情報の専門化・細分化、そして膨大化が進むほど、中長期的なアジェンダ・セッティングは難しくなる。国際情勢の分析もまた例外ではなく、個別の論点を積み上げるだけでは全体像は見えにくい。2026年の国際情勢はどうなるか、「変化の要因」を4つに絞って考えたい。(1)変革的な技術の開発、(2)大国間競争、(3)主要国の政治動向、(4)ブラックスワン――これらの「ネクサス(関連性)」から掴む、注目すべき10のポイント。

 2025年の国際情勢は、第2次トランプ政権の発足を受け、前年とは大きく異なる様相を見せた。2026年はどうであろうか? 本稿では注目すべき10のポイントをあげながら、展望を試みてみた。

国際情勢を動かす四つの要因

 まずお断りしなければならないのは、職業外交官は国際関係の処理を任務としながらも、国際情勢を広く俯瞰して、中長期的な見通しを立てることに必ずしも長けているわけではないことだ。現代外交は高度に専門化し、細分化されており、外交官は与えられた分野における懸案の処理に追われているのが実情である。そうした中で、国際社会の大きな流れを読み取る観察力を養うことは容易ではなく、筆者が仕事と離れて歴史書の執筆に取り組み始めたのも、一種の視野狭窄症を克服するための試みであった。

 したがって、以下に挙げる10のポイントは、実務的経験のみならず、一つの歴史観に基づくところが大きい。具体的には、筆者は国際情勢の変動を促す要因として以下の四つを重視している。

(1)変革的な技術の開発(羅針盤、産業革命、核兵器の開発、IT革命)

(2)大国間競争(第1次、第2次の世界大戦、米ソ冷戦、米中の戦略的競争)

(3)主要国の政治動向(米国独立戦争、ロシア革命、トランプ主義)

(4)ブラックスワン(「9・11」、世界金融危機、新型コロナ感染症)

 今日の国際関係は、これらの要因が相互に影響を与えながら推移しているため、一層複雑な様相を呈している。国際情勢を理解するためには、このネクサス(関連性)を念頭に置く必要がある。

 筆者がこうした視点を踏まえて考える2026年の注目点は以下のとおりである。

注目点1:AI革命のうねり

 AI(人工知能)が国際関係に大きな影響を与える変革的技術であることは衆目の一致するところだが、この技術がどのようなスピードで、また、どのようなインパクトをもって国際社会に受容されるかは、現時点では判断がつきにくい。しかし、来るべき変化に対する期待と懸念は、すでに経済、政治、外交の各方面で様々な動きを生起させている。2026年にはこうした動きがより広範なうねりへと発展していくように思える。筆者が冒頭に述べた「ネクサス」を体現するのがこのうねりだ。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
冨田浩司(とみたこうじ) 元駐米大使 1957年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。1981年に外務省に入省し、北米局長、在イスラエル日本大使、在韓国日本大使、在米国日本大使などを歴任。2023年12月、外務省を退官。著書に『危機の指導者 チャーチル』『マーガレット・サッチャー 政治を変えた「鉄の女」』(ともに新潮選書)がある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top