中央アジアの内陸国、ウズベキスタンの首都タシケントへ向かう機上。歴史の彼方へ消えた幻影都市楼蘭、荒涼としたタクラマカン砂漠を眺めながら、「異邦人」などのミュージックを聞きつつ、シルクロード交易の難所であった天山山脈を楽々と飛び越えて、数時間後には目的地へ到着する「はず」であった。 しかし現実には、太陽の代わりに月が登場し、眼下には闇の世界が広がるのみ。機内はミュージックを聞けるような環境ではなく、会話をするにも大声を張り上げなければならないほど、ジェットエンジンの騒音が激しかった。本来であれば中古であっても欧州製のエアバス機で、一応は快適な空の旅がエンジョイできる「はず」であったが、機体は予想外で、しかも最悪のロシア製イリューシン62型機だった。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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