国際論壇レビュー

「ルビコン川を渡った」米オバマ政権の「オリンピック・ゲームズ」

「ルビコン川を渡ってしまった」。ホワイトハウスの危機管理室(シチュエーション・ルーム)の会議テーブルに、こなごなになった遠心分離器の破片が置かれた時を思い出しながら、ヘイデン元CIA長官は、そう語った。コンピューターウイルスを使って、遠心分離器の音速に近い回転スピードを操作し、破壊するのに、はじめて成功した。G・W・ブッシュ政権の末期のことだ。分離器は2003年に、核兵器開発を断念したリビアの指導者カダフィ大佐(当時)が、米政府に引き渡したものだった。核技術の闇市場をつくったパキスタンのカーン博士から買ったP1と呼ばれる型の分離器だ。イランも同じものを使ってウラン濃縮を行なっていた。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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