ブックハンティング・クラシックス (4)

「エリートの傲慢」を活写したアメリカ・ジャーナリズムの傑作

執筆者:村田晃嗣 2005年5月号
エリア: 北米

『ベスト&ブライテスト』The Best and the Brightestデイヴィッド・ハルバースタム著/浅野輔訳朝日文庫 二十世紀前半のアメリカを代表するジャーナリストがウォルター・リップマンであることは衆目の一致するところだが、二十世紀後半のそれは、おそらくボブ・ウッドワードとデイヴィッド・ハルバースタムであろう。二十一世紀に入った今日も、両人とも現役である。 ウッドワードは、カール・バーンスタインとの共著『大統領の陰謀』(一九七四年)で、ウォーターゲート事件の真相を追及して一躍有名になったが、ハルバースタムは、この『ベスト&ブライテスト』(一九七二年)でベトナム戦争にのめり込むアメリカ政府のエリート群像を活写して、令名を馳せた。ウッドワードとバーンスタインは『ワシントン・ポスト』紙の地域面担当記者、ハルバースタムは『ニューヨーク・タイムズ』紙の特派員と、その背景は異なるが、内政と外交で超大国アメリカを蝕んだ事象を怜悧に扱っている。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
村田晃嗣(むらたこうじ) 1964年、神戸市生まれ。同志社大学法学部卒業。ジョージ・ワシントン大学M.Phil。神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(政治学)。広島大学総合科学部助教授、同志社大学法学部助教授などを経て、2005年より同教授。2013年から2016年まで同志社大学学長を務める。著書に『大統領の挫折――カーター政権の在韓米軍撤退政策』(アメリカ学会清水博賞、サントリー学芸賞受賞)、『戦後日本外交史』(共著、吉田茂賞受賞)、『トランプ vs バイデン――「冷たい内戦」と「危機の20年」の狭間』、『978-4623093946政治学者のシネマ・エッセイ』など。
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