中東―危機の震源を読む (21)

敵対勢力を利した米「中東政策」の逆効果

 イスラエルとヒズブッラー(ヒズボラ)との大規模な戦闘が開始してから一カ月の八月十一日、停戦を求める国連安保理決議一七〇一が全会一致で採択された。ヒズブッラーとイスラエルの双方に攻撃の停止を要求し、レバノン国軍の南部レバノンへの展開や、それが可能になるまでの間に国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の規模と任務を増強する、といった内容である。ヒズブッラーの武装解除を求めた二〇〇四年の安保理決議一五五九も再確認された。 停戦決議の採択と、両当事者の一応の受け入れ表明がなされ、紛争を一定規模に封じ込める効果は期待できるが、問題解決には程遠い。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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