郵政民営化の政治的意味づけは、二〇〇五年のいわゆる郵政選挙から四年近くを経過したにもかかわらず、依然として自民党の内部で定着したとはいえない。経済的課題のなかでの位置づけについての争点整理は一つひとつ前進しているにもかかわらず、政治的な受け止めに振れが大きいのはなぜなのか。衆議院選挙で選挙区の有効投票総数の六分の一から三分の一程度を獲得すればよかった中選挙区制度時代からの“残照”が依然として大きいからだ、というのが私の見解である。 各種の世論調査から判断すると、郵政民営化の意義を疑う声は圧倒的な少数である。もちろん具体的な小言はいくつも拾うことができよう。集配郵便局数が合理化されたので不在で局に戻った郵便物の受け取りに不便をきたすようになったとか、かつての官営の時代には郵便の配達時に依頼が可能であった郵貯の口座からの資金の出し入れが不可能になったとか、という苦情である。

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