ブックハンティング・クラシックス
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「陥穽」があるからこそ魅力的なE. H. カーの徹底したリアリズム
『危機の二十年 1919―1939』E. H. カー著/井上茂訳岩波文庫 1996年刊(1952年、岩波現代叢書より刊行。現在は古書としてのみ入手可能)「力は、それが行使されようと、脅しに用いられようと、静かに保持されていようと、国際的変革における核心の要因である。そして変革は一般的に言って、力を発動し得る者、あるいは発動名義人の利益としてのみ成就されるであろう。『力の脅しに屈する』ことは、平和的変革の過程にみられる通常の一階梯である」。「力は、あらゆる政治的秩序に不可欠な要素である。……国際秩序という考えは(英国という)優越した一強国によって創られた」。が、この強国は武力的にも、通貨・貿易面でも凋落した。「しからば、国際秩序はいかなる力によって再建されることになるのか」(引用訳文は本稿筆者による)。
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