「両岸」が固唾をのむ台湾5大都市選挙

執筆者:野嶋剛 2010年10月29日
エリア: アジア
苦境の馬英九総統(C)AFP=時事
苦境の馬英九総統(C)AFP=時事

 9月下旬、ホテルオークラのオーキッドルーム。台湾きっての美男子政治家ながら冷徹で鋭い政治判断から「カミソリ金」と呼ばれる男は、複雑な表情を浮かべていた。  金溥聡。清朝皇帝末裔の満州貴族出身で、愛新覚羅の名も持っている。馬英九総統が最も信頼する側近で、馬の振り付け役を長く務めてきた。馬の台北市長時代に見いだされ、メディア研究の学者から副市長に抜擢された。馬には男色疑惑があるが、金は馬の恋人という噂が流されるほど、ぴったりと寄り添った2人3脚で政治の出世街道を歩んできた。2008年の総統選では馬圧勝の最大の功労者とされ、いったん政治を離れたが、2009年夏の水害対応で支持率が激減した馬を救うべく同年末から与党国民党のナンバー2、秘書長に就任。党主席である馬英九の下で政権の再浮揚に全力を挙げてきた。  その金がいま、ポストを追われるかどうかの瀬戸際に追い込まれている。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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