9月下旬、ホテルオークラのオーキッドルーム。台湾きっての美男子政治家ながら冷徹で鋭い政治判断から「カミソリ金」と呼ばれる男は、複雑な表情を浮かべていた。 金溥聡。清朝皇帝末裔の満州貴族出身で、愛新覚羅の名も持っている。馬英九総統が最も信頼する側近で、馬の振り付け役を長く務めてきた。馬の台北市長時代に見いだされ、メディア研究の学者から副市長に抜擢された。馬には男色疑惑があるが、金は馬の恋人という噂が流されるほど、ぴったりと寄り添った2人3脚で政治の出世街道を歩んできた。2008年の総統選では馬圧勝の最大の功労者とされ、いったん政治を離れたが、2009年夏の水害対応で支持率が激減した馬を救うべく同年末から与党国民党のナンバー2、秘書長に就任。党主席である馬英九の下で政権の再浮揚に全力を挙げてきた。 その金がいま、ポストを追われるかどうかの瀬戸際に追い込まれている。
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