離合集散を繰り返すアラブ世界の多様性

執筆者:浅井信雄 2000年11月号
エリア: 中東

 イスラエル・パレスチナ衝突に対応するため、二〇〇〇年十月、カイロで招集されたアラブ首脳会議に、イラクからも招かれてターリク・アジズ副首相が出席した。イラクの招待は、湾岸危機発生の一九九〇年以来である。 同じアラブ国家のクウェートに侵攻して、アラブ・ナショナリズムを分裂させた罰として、アラブ世界から締め出された形であったイラクの、十年ぶりの復権と名誉回復である。 それを可能にしたのは、エルサレムのイスラム聖地について、イスラエルが支配継続の意図をあらわにしたことだ。アラブ世界の「大敵」に対抗するためには、「小敵」を許してまで結束を固める必要があったのである。

カテゴリ: カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top