予定表にのらない事態が「意味」を決める

執筆者:田中明彦 2004年1月号
エリア: 中東 北米

 将来を完璧に予測することは不可能である。ただ、人間は全く何の計画もたてずに行動しているわけではないから、あらかじめ決まっているスケジュールを眺めることで、だいたい何がおこるかを知ることができる。 その際に注意しなければならないのは、それぞれの予定の持つ「意味」である。たとえば、毎年六月ころには主要国首脳会議があるし、二〇〇四年のような年には四年に一度の出来事として、春にロシアで大統領選挙、台湾で総統選挙があるし、十一月にはアメリカ大統領選挙がある。 とりわけアメリカの大統領選挙については、新年早々から選挙戦の動向が注目を集めるのが常である。しかし、一体何が争点になるのかは、カレンダーを眺めているだけではよく分からない。なぜなら、予定されている出来事の「意味」を決めるのは、実は「予定」できないさまざまな事態の連鎖だからである。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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