迫る「執権10年」:「総書記の分身・金与正」が担う「先南後米」ミッション

執筆者:平井久志 2021年10月12日
エリア: アジア 北米
国務委員に就任し、対韓対米交渉のミッションを担うことになった金与正氏 (C)EPA=時事
金正恩体制は、南北関係を改善し韓国に米国への働き掛けをさせた、2018年平昌冬季五輪後の「通南通米」路線に戻りつつあるようだ。それはまず韓国を取り込み、米国との対話を目指す「先南後米」路線でもある。国務委員起用で「総書記の分身」にふさわしい肩書を持つことになった金与正は、その対外交渉の中核となる可能性が高い。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は、1月の党大会で「今後も強対強、善対善の原則で米国に相対する」と言明した。崔善姫(チェ・ソンヒ)第1外務次官も3月の談話で、ジョー・バイデン米政権が2月中旬から接触を働き掛けてきたことを認めながらも、「時間稼ぎに応じる必要はない。接触の試みは無視する」と対話を一蹴していた

 ところが6月の党中央委員会第8期第3回総会で、金党総書記は対米関係について、対話と対決の両にらみの姿勢を示した

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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