国際人のための日本古代史 (144)

スサノヲ篇(7)
文明に抗う人びとのヤマト建国――スサノヲの文明論6

執筆者:関裕二 2022年2月27日
タグ: 日本
エリア: アジア
稲作の遺構が残る板付遺跡(福岡県福岡市)。いわば“文明”の最先端だったが(筆者撮影)
文明を取り入れた進化の結果が「ヤマト建国」ではない。最近の考古学が明らかにしたのは、むしろ文明を反面教師とする人びとが畿内という地を選び、体制を逆転させたのだ。そのシンボルがスサノヲだった――。

 スサノヲは神話の中で「日本には浮く宝(木材、森林)がなければならない」と述べ、植林事業を手がけていた。文明は必ず森を食べ尽くし、都市を砂漠にしてしまう。スサノヲは文明の欠点をすでに見抜いて、警鐘を鳴らしていたのではなかろうか。そして、日本人の三つ子の魂に、このスサノヲと同じ精神が宿っているように思えてならない。

人間は進歩するのか堕落するのか

 江戸時代の国学者たちは、太古の日本に憧れを抱き、『古事記』の神話世界を無二の哲学と考えていた。人類は進歩し発展すると現代人は信じているが、国学者たちに言わせれば、人は徐々に堕落してきたのだという。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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