約1カ月間も外交の表舞台から姿を消していた中国の秦剛外交部長(57)が7月25日、解任された。それから約1カ月が経つが、中国政府は、解任の理由を明らかにしていない。秦の後任には7カ月前まで外交部長だった前任の王毅・共産党中央外事工作委員会弁公室主任(党中央政治局委員)(69)を再登板させた。
外交の裏側で一体何があったのか――。王毅と秦剛という、習近平国家主席の外交政策を引っ張った「2人の戦狼外交官」の軌跡を追うことで、秦剛失脚の真相と王毅外交の行方に迫る。
頼りないが、優しい報道官
秦剛解任決定後、外交部公式サイトの外交部長欄から秦の情報や写真が削除された。通常の退任時と異なり、存在すら抹殺しようという処理から、噂されている香港テレビのニュースキャスターとの不倫という単純な醜聞だけでなく、習近平に対する背信行為と受け止められるような重大な国家安全問題が絡んでいるのではないかとの見方も浮上する。今後、正式な発表があっても真相は明らかにならないだろう。
通信社の北京特派員だった筆者が秦剛と初めて会ったのは、今から18年前の2005年。小泉純一郎首相(当時)による靖国神社参拝で日中関係は緊張し、同年4月には中国全土で大規模な反日デモが吹き荒れた。同月から、報道官として外交部の定例記者会見に登場したのが、駐英大使館参事官から副報道局長兼報道官に栄転した秦剛だった。
中国外交部報道官による記者会見制度は……
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