ポイント・アルファ (1)

AI市場をブルー・オーシャンにする企業は?|須藤修・中央大学ELSIセンター所長(1)

執筆者:関瑶子 2023年9月2日
タグ: AI
生成AIの登場により人工知能の普及が加速している。今後どんな企業がAI市場に参入し、どのようなプロダクトを上市していくのか。超大手テクノロジー企業だけが活躍するのか、ブルーオーシャンが広がる分野とは……?(聞き手:関瑶子)

 長野光と関瑶子のビデオクリエイター・ユニットが、フォーサイト読者に向けて発信するYouTubeチャンネル「Point Alpha」。今回は内閣府の「人間中心のAI社会原則会議」議長や総務省の「AIネットワーク社会推進会議」議長を務め、社会情報学に精通している須藤修氏に関瑤子が聞いた。 ※主な発言を抜粋・編集してあります。

「性能の差を料金化」がビジネスの主流に?

──ChatGPTをはじめとする、生成AIとはどのようなもので、以前のAIとは何が異なるのでしょうか?

 「生成AIは英語で『Generative AI』と言います。Googleにいた研究者アシシュ・バスワニ等が『Transformer』という深層学習モデルのアルゴリズムを開発しました。この研究チームの一部が、OpenAIに移籍して製品化したものがChatGPTです」

 「『Transformer』は自然言語処理(NLP)という方法で人と会話をします。ユーザーはチャットに質問を書き込み、この書き込みがAIへの命令になる。命令に従ってAIは文章を作り回答します」

 「画像生成AIの場合は、私が『Aさんの顔をクロード・モネ(フランスの印象派の画家)っぽく描いてください』と頼むと、AIはこれまでにインターネット上に蓄積された数十万に及ぶモネの絵や写真などのデータを集め、Aさんの顔をウェブ上から探し出してきて、加工してモネ風のAさんの肖像画を創り出します」

 「『人工知能の民主化』とも言われますが、誰もがAIを操れるようになった。これは大きな変化です。かつてはPython(パイソン)などのプログラミング言語を使って命令文を書いていたので、専門的な知識が無ければAIに命令することはできませんでした」

──ChatGPTには無料版と有料版があり、有料版のほうがサービスの精度が向上します。AIをプロダクトとして提供する企業は、このように性能に差を付けて料金化していくビジネスモデルが主流になっていくのでしょうか?

 「OpenAIは言語モデル『GPT3.5』を使った『ChatGPT』を無料版にし、『GPT4』を使った『ChatGPT Plus』を有料版にして、それぞれ提供しています。『3.5』と『4』では性能が大きく異なります。『3.5』は3550億パラメータで、『4』は5000億から1兆パラメータと言われています」

※パラメータとは、機械学習モデルが学習過程において最適化を行う重みのこと。パラメータ数が増えると精度が高まる。

 「しかし、OpenAIはやがては、無料版を縮小して、可能なかぎり有料版を使ってもらえるような形にビジネスを変えていく方針のようです」

 「なぜわざわざ無料版を提供するのかというと……

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執筆者プロフィール
関瑶子(せきようこ) ライター・ビデオクリエイター 早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。You Tubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。
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