自民党の二階俊博元幹事長が次期衆院選に出馬しない方針を明らかにし、党内に波紋を広げている。派閥パーティーを巡る政治資金規正法違反事件に関し、関係議員の中で不記載の金額が最多だった責任を取るとしているが、水面下では党執行部が二階氏に対し、子息に地盤を引き継げるよう環境整備をしながら引退を促したとの見方もある。党による処分を控える安倍派幹部に自主的な離党を決断するよう、プレッシャーをかける狙いもあるようだ。
「私が会長を務めていた派閥の政治資金問題が政治不信を招いた。改めて国民の皆さん、これまでご支援くださった地元の皆さんに深くお詫び申し上げる。すでに派閥の元会計責任者と私の秘書が刑事処分を受けているが、その政治責任はすべて監督責任者である私自身の責任だ。私は政治的責任を明らかにするため、本日、岸田文雄自由民主党総裁に、次期衆院選に出馬しないと伝えた」
二階氏は3月25日午前、自民党本部で記者会見を開き、不出馬を正式に表明した。会見では、年齢が関係しているのかという記者の質問に、二階氏が鋭い目で「お前もその年が来るんだよ」とすごむ場面もあった。
二階氏は次の衆院選で、すでに党から衆院和歌山新2区候補として公認内定を得ていた。会見では、自らの後継に関しては「地元の皆さんの判断に任せている」と語るのみ。同席した二階派の側近・林幹雄元経済産業相も「和歌山県連の幹事長に電話で、『県連にお任せする』と伝えただけだ」と説明するにとどまった。
二階派は今回の事件で、東京地検特捜部の家宅捜索を受け、同派の会計責任者が在宅起訴された。二階氏個人も、政治資金収支報告書への不記載額が過去5年間で3526万円にのぼったと党に報告。個人秘書が同法違反罪で罰金の略式命令を受けている。不出馬は、これらの責任を取るというのが表向きの理由だ。
世耕の鞍替えを封じ三男へ禅譲か
しかし、永田町ではこのタイミングでの不出馬表明は、「二階氏にとって渡りに船だった」(二階派閣僚経験者)との見方が多い。
二階氏は現在85歳。健康不安もあることから、ここ数年来、秘書を務める三男、伸康氏(46)に地盤を禅譲するタイミングを探ってきた。ただ、障壁となってきたのが、世耕弘成前参院幹事長(和歌山選挙区)の存在だ。
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