オペレーションF[フォース]
オペレーションF[フォース] (67)

連載小説 オペレーションF[フォース] 第67回

執筆者:真山仁 2024年6月1日
タグ: 日本
エリア: その他
(C)AFP=時事[写真はイメージです]
国家存続を賭けて、予算半減という不可能なミッションに挑んだ「オペレーションZ」。あの挫折から5年、新たな闘いが今、始まる。防衛予算倍増と財政再建――不可避かつ矛盾する2つが両立する道はあるのか? 目前の危機に立ち向かう者たちを描くリアルタイム社会派小説!

【前回まで】周防が出席した日本海連合の例会では、「防人税」に賛意の拍手が起きた。一方、同じく財務省の土岐は、江島元総理と与党重鎮の南郷に「徴兵制しかない」と洩らす。

Episode6 一世一代

 

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「徴兵制だと! 土岐君、さすがにそれは過激だろう」

 普段は薩摩隼人を誇る南郷が、心底驚いて声を上げた。

 一方、江島には驚きはないが、渋面を浮かべて口を開いた。

「確かに君が指摘した切迫感は生まれるな。だが、ハードルは、歳出半減の比じゃないぞ。そもそもなぜ、徴兵制なんぞという時代遅れの発想が浮かんだんだね」

「江島さんは、お聞き及びかも知れませんが、防衛費の財源確保のために新税を設けるなら、『防人税』としてはどうか、という案が出ています。

 それで思いついたんです。防人になるかカネを払うか。そう問えば、多くの人は、きっとカネを選ぶのではないか。

 それでも、カネがない人、増税を認めたくない人は、兵役に就いてもらう。それはそれで、陸上自衛官の削減に繋がります」

「国民の間に格差が広がっていることが問題になっている昨今、分断を決定づけるような提案は、国民から激しく叩かれるだけだろう」

 南郷の指摘は、承知の上だ。……

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
真山仁(まやまじん) 小説家 1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な裏側を描いた『ハゲタカ』でデビュー。同シリーズはドラマ化、映画化され大きな話題を呼んだ。『マグマ』『ベイジン』『黙示』『売国』『ロッキード』『当確師 正義の御旗』など著書多数。最新刊『アラート』は「日本の未来を守る」ための安全保障がテーマの長編ポリティカル・フィクション。
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