「結果責任」と政治の決断

執筆者:田中明彦 2005年3月号
タグ: アメリカ
エリア: アジア

 イラクにおける暫定議会の選挙は、悲観的な予測と比べてみると、予想外にうまくいったように見える。ブッシュ大統領は、イラク国民の勇気をたたえつつ、この結果は成功だったと評価している。 投票率があがらず、各地で大規模な武装蜂起が続発して、選挙結果が惨憺たるものとなった可能性と比較してみれば、今回の事態がよかったことは間違いない。その意味で、選挙を日程どおり実施させたブッシュ政権やイラクの暫定政権の判断は正しかったということになる。 しかし、そのことは、今回の選挙を強行することはあまりに危険が大きいので延期すべきだと主張した人々の見解が、誤りだったとか、まったく見当はずれだったということを必ずしも意味しない。なぜなら、一月三十日以前の段階で、事態が現実におこったようになるということに確信をもてた人はいないからである。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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