「開けるな。開封しないままビクトル・チェルカシンに渡せ」 一九八五年十月四日、米バージニア州アレクサンドリア。駐米ソ連国家保安委員会(KGB)政務担当官ビクトル・デグタイアル氏の自宅に送られた郵便の内側の封筒の表面には、そう書かれていた。チェルカシン氏とは、当時の駐米KGB防諜担当責任者のことである。 これが、米連邦捜査局(FBI)前幹部ロバート・ハンセン容疑者(五五)が「B」という仮名でKGB側に、自分から情報提供を持ちかけた最初の手紙だ。KGBワシントン支局の内情を熟知するハンセンらしいアプローチの仕方だった。
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