ミロシェビッチ放逐後のセルビアで民主化を進めてきたジンジッチ首相が暗殺された。独裁体制崩壊後の国づくりの困難さが浮き彫りに―― いくらバルカン政治が暴力的でも、三月十二日のゾラン・ジンジッチ・セルビア共和国首相の暗殺は、やはり異常で衝撃的な事件だった。 ジンジッチは、ベオグラード中心部の首相府を出たところで腹と背中を撃たれて死亡した。防弾チョッキを着ていれば助かったかもしれないのに、彼はそれを拒んだ。自分を憎む勢力の存在は十分に認識していたが、怯えた人生は送りたくないと常日頃から言っていた。何より、旧ユーゴスラビア連邦の独裁者スロボダン・ミロシェビッチを放逐してからの二年半で、セルビアは最も不安定で危険な時代を乗り切ったとジンジッチは思うようにしていた。その早すぎる死の数週間前、彼はこう語っていた。「もちろん、前途に課題は山積している。でも我々はここまできたんだ。違うかい?」。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン