昨年夏のボリビア大統領選挙で先住民族系のエボ・モラレス候補が、大方の予想を覆して決選投票にまで進んだことは記憶に新しい。モラレス氏が掲げた、麻薬コカインの原料コカノキの栽培推進というスローガンを、貧しい先住民族系の農民たちは強く支持したのである。コカ葉の大産地、中部山岳地帯チャパレ地方。ここを新作長編『GMO』の舞台の一つに選んだ服部真澄氏が、コカノキ栽培の伝統に根ざすボリビア社会の現状を探った――。「ボリビアへ赴き、コカノキの栽培を見てきた」 そう告げると、たいていの人がおやという顔になる。 コカノキからは麻薬・コカインが連想される。当方が小説家で、取材のための旅であるといっても、なにか不穏な感じを受けるのだろう。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン