インテリジェンス・ナウ

サウジ、イラン、イスラエル――モサドが操作する核情報

執筆者:春名幹男 2003年12月号
エリア: 中東

 それは、わずか二十六時間の公式訪問だったが、各国情報機関に複雑な波紋を広げた。 サウジアラビアのアブドラ皇太子が十月十八日から十九日にかけて行なったパキスタン訪問のことだ。ムシャラフ大統領が自らイスラマバードの空港に出向いてアブドラ皇太子を出迎え、帰途も見送るという熱烈歓迎ぶり以外、表面的にはニュースがなかった。日本では訪問自体報道されなかった。 最初に火をつけたのは、パキスタンのウェブ新聞サウス・アジア・トリビューンだった。パキスタン情報当局がアブドラ皇太子の宿舎であるパンジャブハウスのロイヤルスイートに盗聴器を仕掛け、それがサウジ秘密警察に探知されていた、というのだ。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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