「電力が足りない」の挙証責任

執筆者:豊川博圭 2011年7月21日
タグ: 日本
エリア: アジア

 電力会社が「供給力が足りない」と主張し、消費者に節電を強いている。その際、電力会社は需給の詳細を明らかにしない。電力不足の挙証責任が誰にあるのか――電力会社も、そして私たち社会の側も、このポイントを軽視もしくは失念しているように見える。

消えた600万kW

東日本大震災翌日から3月末までの電力需要想定と供給力(東京電力のプレスリリースを元に作成)
東日本大震災翌日から3月末までの電力需要想定と供給力(東京電力のプレスリリースを元に作成)

 震災翌日の3月12日、東京電力は管内の供給力が3700万kWに落ちたと発表した。震災前には5200万kWの供給力があったが、福島第一・第二原発が全停止し、震源に近い火力発電所が軒並み沈黙したためだ。  その次の日のプレスリリースで不思議なことが起きた。翌14日月曜日の供給力がさらに減って3100万kWになっていたのだ。その差600万kW。これは福島第一原発1-6号機の合計発電容量470万kWを上回る。その膨大な量の供給力が消えてしまった。  東電広報に理由を問い合わせたところ、「揚水発電所の水を落としきったため」という。電力需要が比較的少ない土日に揚水を使いきり、14日月曜の未明時にも揚水発電にポンプアップする電力の余裕がなく、ピーク需要時への揚水発電の寄与がゼロになったとのこと。「ご理解ください」と言われてもなかなか理解しにくい話だ。本件について東電は正式に発表していない。  東電はこの供給力3100万kWと需要予想4100万kWを根拠に「計画停電せざるを得ない」と発表し、これを実行した。

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執筆者プロフィール
豊川博圭(とよかわひろたか) 1961年兵庫県生れ。83年、東京大学農学部農芸化学科卒業、同年4月、日本経済新聞社入社。東京本社編集局科学技術部を中心に、医療、情報、環境、エネルギー、原子力、科学技術政策などを取材。97年から2000年福井支局長。2000年から科学技術庁記者クラブ担当。01年、同社退社。
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