世界漫遊「食考学」の旅 (1)

【スリランカ・ニゴンボ】カレーに潜んだ鰹節の旨味

執筆者:野嶋剛 2018年8月17日
エリア: アジア
フィッシュマーケットで発見したカツオ(筆者撮影、以下同)

 

 旅の文章というジャンルで圧倒的に面白いのは『火宅の人』の作者として知られる檀一雄。彼は『朝市、昼市』というエッセイで、こんなことを書いている。

「世界の、あちこちの町をうろつく時に、その町の食べ物を食べ、その町の飲み物を飲むんでなかったら、旅の意味が薄れるだろう」

 まさにその通りで、旅のすべてが食べることであるとは言わないが、少なくとも私にとっては、「旅」と「食」は分かちがたく結びつけられた永遠のテーマとなっている。旅に行けば、そこでしか見かけない食べ物を探して食べる。口に入れるまでの予想と、その後の結果は、それがアタリでも、ハズレでも、日常の「期待通りか否か」の2択しかない世界よりも、かなり意外性に満ち、私の視野を広げてくれる食体験となる。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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