風が時間を
風が時間を (39)

筆を置くにあたって(最終回)

執筆者:徳岡孝夫 2019年5月14日
カテゴリ: 文化・歴史
エリア: 日本

 昔、南大阪に1人の長者が住んでいて、その息子の名を俊徳丸といった。弱法師とも呼ばれていたのは彼が目が見えない、つまり弱い法師だったからである。彼は父の元を離れ人々の施物で暮らしていた。私も大阪に生まれ京都で教育を受けたがそれはいわば教育という布施を親から受けたのと同じであった。1952年の11月、船場の我が家では四国・高松へ新聞記者として赴任する私の壮行を兼ね、妹・絢子の19歳の誕生を祝い、すき焼き会を催した。

 食後、祖母と父、妹がそろって大阪駅まで私を送り私は夜行列車で高松へ赴任した。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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