大森実氏は北ベトナム政府の招待でハノイに行ったとき、米空軍の北ベトナム爆撃のニュース映画を見せられ、小児病院が爆撃される様子を書いて米軍の非人道性を記事にした。
記事はライシャワー駐日米大使の「プロパガンダ映画の鵜呑みは疑問だ」との批判を招いた。
毎日新聞は言論の自由への米政府の攻撃と受け止め、論争になった。大森氏が社を辞めることになった原因である。結局大森氏は退社し、毎日は大使の批判を突っぱね一件は平行線のうちに終わった。
そのとき私は『サンデー毎日』記者だったが、米政府に対抗する論戦に加わることはしなかった。シラキュース大学院では「言論の自由は、新聞を批判する側にも正当なスペースを与えなければならない」と教えていて、私は社の態度を完全には正当化できなかったからである。

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